受講者の感想

*アンケートに寄せられた受講者の感想をご紹介します。

■文化/社会人類学研究セミナーに参加して
・普段交流のない地域の人類学者から意見を伺えたため。最近設立されたベンガル語学科などからも聴講者が来るものと勘違いして準備してしまった。近年の人類学の研究動向を全く踏まえることなく古臭い論点でテーマ設定をした挙句、事例そのものの面白さを強調しようとし、地域を越えたテーマや展望が皆無の報告をしてしまった。結果的に事例の面白さも上手く伝えることができず申し訳ないことをした。


■コメントについて
・コメンテイターの指摘は、研究の主題の設定をめぐる問題と論理的一貫性についてであったと思います。「先行研究にないこと」は、発表者自身追及しているつもりでしたが、コメンテイターが指摘したように、それは確かに「○○研究の文脈」の範囲においてであって、それを理論的に裏付け、論理的に一貫したものとする作業はまだ端緒についたばかりでした。
一方、人類学の儀礼の研究における到達点との距離が示されていないという指摘がなされました。発表者はものの物質性、身体性、エージェンシーについて問題意識をもっていましたが、久保が指摘するように「人間と事物の関係に介在する意味の働き」[久保2008:1] という「意味のアポリア」は完全に解決されていない問題であると考えます。当発表は修士論文におけるその問題意識(物質性と意味に関わる問題)の延長上にあります。
頂いた厳しいコメントは、今後博士論文にむけて「染織・技術」を主題にのせる方向性を決めるために、大いに啓発的であったと感じています。今後、研究者である「私」の実践も含め、研究対象を現在生起していることにシフトすることに、研究の可能性を見い出そうと考えています。

■質疑応答は博士論文を執筆する上で役に立ったか
・儀礼研究としてまとめる上では今回の報告のように忘れるべきでない当然踏まえるべき点を指摘されたため。その上で、報告通りの古臭い象徴論をテーマとする場合に、欠如していた項目がどこかがコメントにより明らかになった。
・宗教、とりわけ「改宗」の問題に質問が集中したように思います。問題点を整理すると、社会の変化と人々の意識の変化の連関とプロセスについて、発表者自身、明確に問題点を整理し提示することができなかったことが第一の問題として挙げられると思います。さらに、発表(プレゼンテーション)の内容の組み立ての問題です。一口で多くのデータを伝えようとしたために、一方的概念的な提示となり、じっさいのフィールドにおける具体性を伝えることができなかったことは残念でもあり、また大いに反省しています。すなわち、ミクロな個々の事例によって結論を導き出す過程を組み立て、解釈と分析の妥当性を打ち出すことが肝要です。諸事例を積み重ねる、論証することによって、結論自体も短絡した二分法を免れ得ると考えます。
最後に、宗教、とりわけ「改宗」の問題は、もっと緻密なデータを得て、組み立てることの重要性を、多くの先生方から指摘されたと思います。

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