風間伸次郎(採録・訳注).1996.『オロチ語基礎資料』(ツングース言語文化論集7,鳥取大学教育学部)より

17.その他の伝説

омоасабагди-ха-њи,эди-ǯи-њи.хоӈтоњии-ва,хусэн-ти,
ある女が暮らしていた、夫と。別の人を、別の男の所へ
(хуликтэ-хэ-њи).саа-и-њи,аса-њињие,хоӈто
通った。(夫は)知る、妻が人の所へ、別の所へ
хуликтэ-и-њи.
通っている。
(以下はロシア語。)このように妻の密通がばれた時、夫は妻の手足を丸太に縛り付けて、地面に転がしておき、手や足を蟻や蚊に喰わせた。それで妻は死んだという。(同様の伝説をГлишно, Людмира Антоновна氏からも得た。)
би-чи-њихитэ-њи,хатала.тэихаталахусэн-ǯи,
いた、子供、娘が。その娘は男と、
хуликтэ-хэ-њи.хитэбаа-ха-њи,оо-хо-њи.эњи-њитэи
通った。子供ができた、作った。母親はその
хитэ-вээ-си-њ(и) гэлэ-jэ.баа-лањуу-хэ-њи.моо
子供を欲しない。外へ出る。横にした丸太の
оjо-ла-њиэмугдэхэггисинээдэ-и-њи.бэгди-ǯихаjӱси-и-њи.
上に腹を下に寝かせた。足で踏みつける。
хитэ-њиваа-и-њи.
(そうやって)赤ん坊を殺した。
海で遊ぶ時には、首飾りを落として壊さないようにせよ。バラバラになれば、お嫁に行けなくなる、と親に言われたものだ。
アザラシの肉は少女は食べてはいけない、少年と老人の男女のみが食べた。
アザラシの油は薬にもなった。
トゥムニン河の流域の、小さな丘になっている所に、かつてはКагдаという名の中国人の集落があった。そこには冬にはエウェンキー人が回って来たりしたものだ。 ダータの村の浜辺から見て、左の果ての岬の岩を「おじいさん岩」、右の果ての岩を「おばあさん岩」という。「おばあさん岩」の方が近く、小さい。言い伝えによれば、昔二人はいっしょに船に乗って漁に出たが、嵐に遭って、現在の場所に岩となってとどまったのだという。今も二つの岩は会話をしているのだというう。
омохусэњиеǯеели-ги(-и-њи),ǯеели-ги-и-њи,мээндоо-ла.
ある男が自慢をする、自慢する、自分たちの仲間うちで。
сӱгǯаса=даалесваа-и-њи,мэимэ-ǯи.мээнэjэу=дээ
魚もとってもたくさん獲ったのだ、と、ヤスで。(本当は)自分では何も
э-чи-њи ваа-jа.
獲らなかったのだが。