風間伸次郎(採録・訳注).1996.『オロチ語基礎資料』(ツングース言語文化論集7,鳥取大学教育学部)より

13.ングーティルク

(1)

ӈээтиркэака-мӱнабаагди-ха-ти.ӈээтиркэааки-њи
ングーティルクは兄と暮らしていた。ングーティルクの兄は
усэктэ-вэ=дээваа-лиӈгаби-чи-њи.тиман=даагеа-ван-ти
獣を獲っていた。朝はまだ夜明け前に
бӱта-на-ги-ха-њи,сиксээ=дээхосикта-тиоди-ги-мибӱта-ха-њи.
魚を獲りに出かけ、夕方は星の頃に終えるまで魚を獲った。
њаахувэн-тибааǯикаа=агуулиӈ-ги-хэ-њи.надакууку
(今日も)また森へ朝早く出発した。七羽の白鳥が
эмэ-хэ-њи."ӈээтиркэ,ааки-сиби-и=нуу?"куукугуӈ-ки-њи.
やって来た。「ングーティルクよ、おまえの兄はいるか、」と白鳥は言った。
"бииааки-мигеаван-титукти-ги-и-њи,хосикта-ти
「私の兄は明け方から森へ上っている、星の頃に
оди-ги-и-њи.эхэ-вэ=дэээву-ги-и-њи,мапа-ва=дааэву-ги-и-њи,
終えるだろう。イノシシも持って下りて来る、クマだって持って下りて来る。
бэjу-мэ=дэээву-ги-и-њи.надаӈкуукунадампуǯии
ヘラジカだって持って下りて来る。七羽の白鳥は七人のプジンに
очи-ги-ха-њи."ӈээтиркэ,дили-ва-сиигди-ǯаа-пи,дээб-бэ-си
なった。「ングーティルク、おまえの頭をとかしてあげよう、顔を
сикки-ǯаа-пи,ǯӱӱб-ба-сисэиктэ-ǯисэи-ǯээ-пи."сэи-хэ-ти,
洗ってあげよう、家を箒で掃いてあげよう。」掃いた。
ӈээтиркэдили-ва-њиигди-ха-ти,дээб-бэ-њисикки-ха-ти,
ングーティルクの頭をとかした、顔を洗ってくれた。
гаамсикки-ха-ти.таадӱкуукуӈэи-хэ-ти.ӈэи-ду-вэи
全部洗った。そこで白鳥は去った。去る時に
гуӈ-ки-ти,"дили-ви=даапоти потињэ-ǯээ-си,дээб-би=дээ
言った、「頭もバサバサにしなさい、顔も
мjакта-ǯиаэлӱ-ǯаа-си,сэиктэ-вэ=дээпоти потињэ-ǯээ-си."
木炭で塗りなさい、箒はバラバラにしなさい。」
ӈээтиркэааки-њиэмэ-ги-хэ-њи.ӈээтиркэ э-чи-њ(и)=дээпоти
ングーティルクの兄が戻って来た。ングーティルクはバサ
потинээ-дэjэ,оммо-хо-њи.ааки-њигуӈ-ки-њи,"њи
バサにしなかった、忘れた。兄は言った、「誰が
сэи-хэ-њи?"ӈээтиркэгунэ-и-њи,"биисэи-хэ-ми."
掃除したんだ?」ングーティルクは言った、「私が掃除した、」と。
"дили-ва-сињиигди-ха-њи?""биимээнэигди-ха-ми."
「おまえの頭を誰がとかした?」「私が自分でとかした。」
"jааӱ-ǯиигди-ха-си?"ӈээтиркэгунэ-и-њи,"биичииндэкэ
「何でとかした?」ングーティルクは言う、「私は小鳥の
чопокто-ǯи-њиигди-ха-ми.""дээб-биjааӱ-ǯиаӱ-ха-си?"
爪でとかした。」「顔を何で拭いた?」
"чииндэкээпуктэ-ǯи-њиаӱ-ха-ми.""гэ,биичииндэкэ-вэ
「小鳥の羽根で拭いた。」「じゃあ、私が小鳥を
ваа-ǯаӈэ-и.биидили-мӱчииндэкэчопокто-ǯи-њиигди-ǯаа-си."
捕まえよう。私の頭を小鳥の爪でとかせ。」
эсиваа-ха-њичиндэкэ-вэ.ӈээтиркэ-тигунэ-и-њи"бии
捕まえた、小鳥を。ングーティルクへ言う、「私の
дили-мӱигди-га!"ӈээтиркэигди-ли-ха-њи.игдии-ки-њи,
頭をとかせ。」ングーティルクはとかし始めた。とかすと、
гапа-и-си,э-си-њи=дээ игди-пта.њааэпуктэ-ǯи-њиаӱ-ха-њи
ひっかいた、とかされない。再び羽根で拭いた、
дээб-бэ-њи.гаамдакса-ха-њиэпуктэ."ӈээтиркээ-э,jээу
顔を。全部くっついてしまった、羽根は。「ングーティルクよ、どうして
олочи-ктэ-и-се?""ака,"гуӈ-ки-њи,"надаӈкууку
だましたのか?」「兄さん、」と言った、「七羽の白鳥が
хули-ктэ-хэ-њи,биидили-мӱигди-ха-њи,биидээб-бу=дээ
立ち寄った、私の頭をとかした、私の顔も
сикки-ха-њи,ǯӱӱб-ба=даасээи-хэ-њи.""ӈээтиркэ,минэвэ
洗った、家も掃除した。」「ングーティルクよ、私を
тиманǯаjа-ǯаа-си."тоомпо-во,иммэ-вэбуу-хэ-њи
明日隠せ。」イラクサの糸と、針をやった、
ӈээтиркэ-ду."ӈээтиркэ,"гуӈ-ки-њи,"чунэӈу-н(и)
ングーティルクに。「ングーティルクよ、」と言った、「一番年下の
тэггэ-вэ-њимээнэтэггэ-ти-витэӈ тэӈиппи-ǯээ-си.таадӱи
服を自分の服へしっかりと縫いつけろ。そこで
тинэвэмӱра-ǯаа-си,иппи-ивиоди-ви."таадӱтиман
私を大声で呼べ、縫い終わったならば。」そうして次の日
тээ-ги-хэ.ӈээтиркэааки-њихири-ха-њи.надакууку
起きた。ングーティルクの兄は隠れた。七羽の白鳥が
эмэ-ги-хэ-њи."ӈээтиркэ,куу ку,ааки-њиби-и=нуу,куу
またやって来た。「ングーティルク、クークー、お兄さんはいるか、クー、
ку?""бииааки-м(и)њаӱкегиаван-дӱӈэнэ-хэхувэн-ти.
クー?」「私の兄は早く夜明けには出かけた、森へ。
мапа-ва=даамана-на-ха-њи,эхэ-вэ=дэээву-нэ-хэ-њи,
クマをも獲り尽くし、イノシシをも獲りに行ったんです、
бэjу-мэ=дээваа-на-ха-њи,""ӈээтиркэ," гуӈ-ки-њи,"аак-си
ヘラジカをも獲りに行ったんです。「ングーティルクよ、おまえの兄は
ǯӱӱг-дӱби-и-њиби-ǯээ."таадӱнадаӈкуукуэмэ-хэ-њи.
家にいるようだ。」そこに七羽の白鳥がやって来た。
ӈээтиркэдили-ва-њиигди-и-ти,кумэ-вэ-њи=дээваа-и-ти.
ングーティルクの頭をとかす、シラミをも取る。
ӈээтиркэиппи-ли-хэ-њитэггэ-вэ-њи.тэӈ тэӈиппи-хэ-њи.
ングーティルクは縫い始めた、服を。ガッチリと縫った。
"ака,куук!"мӱра-ха-њи.куукугунэ-и-њи,"нээтиркэ,
「兄さん、お~い!」と叫んだ。白鳥が言う、「ングーティルクよ、
сииjааӱмӱра-и-си?""ээлэхутуњиси-њи,"гуӈ-ки-њи."ака!
おまえは何を叫んでるの?」「ここが痒いの、」と言った。「兄さん、
кууку!"гуӈ-ки-њи.ааки-њиэмэ-хэ-њи.њуӈуӈкууку
お~い、」と言った。兄はやって来た。六羽の白鳥は
сооно-лидэили-ги-хэ-њи,чунэӈу-ти-гдээмэнэ-ǯи-хэ-њи,
煙突を通って飛んで言った、一番下の妹だけが残った。
сооно-лилаппаӈ-ки-њи.ӈээтиркэааки-њитаавааса-наа-jи
煙突の途中に引っかかった。ングーティルクの兄は彼女を自分の妻として
ǯава-ха-њи.ӈээтиркэааки-њикуукуэпуктэ-вэ-њи,наса-ва-њи
取った。ングーティルクの兄は白鳥の羽根を、皮を、
ачӱ-jа,ǯаjа-ха-њи.пуǯиэ-чи-њи ӈэи-jэ,ӈээтиркэ
剥いで、隠した。プジンは去らなかった、ングーティルクの
ааки-њиасала-ха-њи.тууби-чи-тэ,би-чи-тэ,ӈээтиркэ
兄は結婚した。そうしていた、暮らしていた、ングーティルクの
ааки-њибӱта-на-ха-њихувэн-ти.аса-њихэсэхитэ-jи
兄は漁に行った、森へ。彼女の妻は男の子供を
баа-ха-њи.эњи-њидэӈси-хэ-њи,ӈээтиркээмучи-хэ-њи
産んだ。母親は働いていた、ングーティルクが揺り篭であやした。
эњи-њинаса-вахоси-ха-њибӱа-ла.хитэ-њилессоӈо-хо-њи.
母親は毛皮の油を削り取っていた、外で。子供はひどく泣いた。
ӈээтиркээмучи-хэ-њи."jемисоӈо-и-се?"гуӈ-ки-њи.
ングーティルクは揺り篭を揺すっていた。「なんで泣くの?」と言った。
"эњи-синаса-вахоси-и-њи,боггонаса-ва,алӱкта-вањи
「おまえの母さんは皮をなめしてるの、油の多い毛皮を、生皮の内薄膜を
ǯэб-ǯэӈэ-њи,э-ǯи соӈо-jо!"њаасоӈо-хо-њи."ами-си=даа
食べましょう、だから泣かないで。」再び泣いた。「おまえの父さんも
боггобэjу-мэваа-на-ха-њи,э-ǯи соӈо-jо!"гунэ-ки-њ(и)=дээ,
太った獣を獲りに行ったよ、泣かないで、」と言ったが、
њаасоӈо-хо-њи."эњи-синаса-ва-њиами-сиӱммака
なお泣いた。「おまえの母親の皮をおまえの父親は白樺の大箱の
доо-дӱ-њи.таадӱсоӈо-и-виоди-ха-њи,ињэктэ-мэ
中に隠した。」そこで泣くのをやめた、笑うように
очи-ги-ха-њи.таадӱэњи-њиэмэ-ги-хэ-њи."ӈээтиркэ,"
なった。そこへ母親が戻って来た。「ングーティルクよ、」
гуӈ-ки-њи,"нэӈу-сиjемисоӈо-и-виоди-ха-њи?"ӈээтиркэ-вэ
と言った、「おまえの弟はどうして泣くのをやめたのか?」ングーティルクを
чакача-ха-њи.таадӱӈээтиркэгунэ-и-њи,"эњи-сибогго
くすぐった。そこでングーティルクは言う、「おまえの母は油の多い
наса-вахоси-и-њи,тааваǯэб-ǯээ-пи,боггоалӱкта-ва
毛皮をなめしている、それを食べましょう、油の薄い膜を
ǯэб-ǯээ-пи,гуӈ-ки-ми,таадӱсоӈо-и-виоди-ха-њи."
たべましょう、と私が言ったら、そこで泣くのをやめたんだ。」
"оло-ко!"гуӈ-ки-њи,њаачакача-ха-њи.ӈээтиркэгуӈ-ки-њи,
「嘘をつけ、」と言った、再びくすぐった。ングーティルクは言った、
"ами-сибоггобэjу-мэваа-на-ха-њи,тааваǯэб-ǯээ-нэ,
「おまえの父は太った獣を獲りに行った、それを食べましょう、と
туугэну-ки-му,оди-ха-њи."њаачакача-ха-њи."ӈээтиркэ,
そう私が言ったら、泣きやんだんだ。」再びくすぐった。「ングーティルク、
э-ǯи олочи-ктэ-jэ!"ӈээтиркээлээбудэ-и-њичакача-и-њи,
うそをつくんじゃない!」ングーティルクが今にも死ぬほどにくすぐった。
таадӱгунэ-и-њи,"экэ=э,ӱммакадоо-дӱ-њиэњи-си
そこで言う、「姉さん、白樺の大箱の中におまえの母親の
ǯуппу-њиби-и-њигунэ-ки-ми,соӈо-и-виоди-ха-њи."таадӱ
覆いがある、と私が言ったら、泣くのをやめたんだ。」そこで
оди-ха-њичакача-ми.таадӱиǯӱппӱ-м(и)ǯава-ги-ха-њи
やめた、くすぐるのを。そこで自分の覆いを再び手に入れた、
ӱммакан-дӱла.таадӱǯӱппӱ-м(и)бӱjа-ха-мањииппи-ги-хэ-њи,
白樺の箱から。そこで自分の覆いの壊れている所を縫った、
тэти-ги-хэ-њи,куукуочи-ги-ха-њи.хитэ-иǯава-ги-ха-њи,
着た、白鳥に再びなった。自分の子をつかんだ、
оjо-дӱинээ-ки-њиињэи-хэ-њи.таадӱӈэи-ме,ӈэи-ме,
上に乗った、そして去った。そうして飛び去る、飛び去る、
эди-њибэjу-мэтэггэчи-и-њи.хитэ-њиие(ӈ) ие(ӈ)соӈо-хо-њи
夫は獣の腹を割いていた。子供はエンエン泣いた、
ами-миичэ-хэњ-ǯи.таадӱами-њитада-jиǯава-ги-jа,
自分の父を見たので。そこで父は弓をつかんで、
куукуӈэи-и-вэ-њигаппа-ха-њи.хитэ-игаӈгаjӱкӱ-њикондором
白鳥が去って行くのを射た。子供の小指をふっとばして
гаппа-ха-њи.гаӈгаjӱкӱ-њитии-хэ-њи.хитэ-игаӈгаjӱкӱ-ва-њи
射た。小指は落ちた。子供の小指を
ǯава-ги-jа,каптираӱдоо-дӱ-њинээ-ки-њи.бэjу-мэ
手にして、狩用の袋の中に入れた。獣を
тэггэчи-jэ,ноодо-хо-њи.таадӱоолиэмэ-хэ-њи.таадӱ
腹を割いて、放ってあった。そこにワタリガラスがやって来た。そこで
гунэ-и-њиооли-ти,"эибэjу-мээмчикэǯэб-ǯээ-се."ǯӱӱк-ти
言う、ワタリガラスへ、「この獣を一人で喰うがよい。」家へ
ӈэи-хэ-њи."ӈээтиркэ,"гуӈ-ки-њи,"эки-сиjеми
去った。「ングーティルク、」と言った、「おまえの姉はどうして
ӈэи-хэ-њи?""ноколесаоӈо-и-њи.ами-сибэjу-мэ
去ったのだ?」「弟がひどく泣く。おまえの父は獣を
ваа-на-хагунэ-ки-м(у)=дээ,соӈо-и-њи,эњи-синаса-ва
獲りに行った、と言っても、泣く、おまえの母は毛皮を
хоси-и-њи,алӱкта-ваǯэб-ǯээ-негунэ-ки-м(у)=дээ,соӈо-и-њи,
なめしている、油の薄膜を食べましょう、と言っても、泣く、
эњи-сиǯуппу-њиами-сиӱммака-њидоо-дӱ-њиби-и-њи
おまえの母の覆いはおまえの父の白樺の大箱の中にある、と
гунэ-эки-му,таадӱсоӈо-и-виоди-ха-њи.таадӱǯӱппӱ-ми
言ったらば、そこで泣くのをやめたんだ。そこで自分の覆いを
ǯава-ги-ха-њи,иппи-хэ-њи,тэти-ги-хэ-њи,хитэ-иǯава-ги-jа,
手に入れた、縫った、来た、自分の子供をつかんで、
хинала-ги-ха-њи,таадӱӈэи-хэ-њи.""гэ,ӈээтиркэ,эси
背に担いだ、そこで去っただ。」「さあ、ングーティルク、
биӈэњ-ǯэӈэ-икуукухокто-ли-њи,"гуӈ-ки-њи."ӈээтиркэ,
私は行く、白鳥の道に沿って、」と言った。「ングーティルク、
бэjууктэ-њиаjакта-ва-њи,богго-кто-во-њиамӱкеǯэб-ǯээ-се,
獣の肉の良いのを、油の多いのを、後で食べなさい、
окки-кта-ва-њи,ӱмана-кта-ва-њињайкеǯэб-ǯээ-си."туу
悪いのを、油身のないのを、先に食べなさい。」そうして
ӈэнэ-хэ-њиӈээтиркэааки-њи.ӈэнэ-м(и)=деби-ми,омоэкчи
行った、ングーティルクの兄は。行っていて、一人の奴隷が
тӱкки-ǯимоомооли-и-ва-њибаачи-ха-њи."экче,эǯэњ-си
そりで薪を集めているのを見つけた。「奴隷よ、おまえの主人は
jаӱка?"экчигунэ-и-њи,"бииэǯэ-миээкэњэǯээ."
何だ?」奴隷は言う、「私の主人は女性の主人です。」
сииjааӱдэӈси-и-си?"экчигунэ-и-њи,"бииадӱли-ва
「おまえは何を働いているのか?」奴隷は言う、「私は網の
маакчинда-и-ви.""макчи-масиооњгэббичи-и-си?"экчи
縄をなうのだ。」「縄をなう道具をおまえは何と呼ぶのか?」奴隷は
гунэ-и-њи,"хоочкӱ.""экче,ǯэу-лээ-иооњгэли-и-си?"
言う、「ホーチュク。」「奴隷よ、食べる物に何を求めるか。」
"макӱри-вабуу-гэ!"суккэ-jи,ǯӱӱг-дӱлаӈэи-ви,ооњи
「魚の干物をくれ!」自分の斧を、家に帰ったら、どのように
нээ-дэи-сэ?"агдӱачи-и-њи."коӈгӱррамнээ-дэи-ви."мэггээ
置くのか?」と質問した。「ボーンと放り投げとくよ。」メルゲンは
экчи-вэваа-хањи,мээнээкчио-чи-њи.таадӱњэи-хэ-њи
奴隷を殺した、自分が奴隷になった。そこで行った、
экчихокто-ли-њи.суккэ-икоӈгӱррамнээ-ки-њи."ээкэн
奴隷の足跡に沿って。斧をボーンと放り投げた。「女性の
эǯэ,ǯэу-лээ-мбуу-гэ!"гуӈ-ки-њи."экчи,эси
主人よ、食べ物を下さい、」と言った。「奴隷よ、
ӈэнэ-лээ-jиǯэп-пи-си.таадӱњаамакчи-магэлэ-ктэ-ги-и-њи.
出かけるために食べたばかりだろ。」そこでさらに縄をなう道具を探した。
"хоочко=дооиидуби-и-њи?"гэлэ-ктэ-ги-и-њи."эи
「縄を作る道具もどこにある?」探す。「この
экчи=дээ!мээнэнээ-ки-миэ-си-си саа=нӱӱ?"таадӱпуǯии
奴隷ったら!自分で置いておいて知らないのか!?」そこでブジンは
баасињуу-хэ-њи.баасињуу-хэн-дӱ-њиэкчихитэ-и
外へ出て来た。外へ出て来た時に、奴隷は自分の子供の
ӈаала-ва-њитулэ-ги-хэ-њи.таадӱиэкчиӈэнэ-хэ-њихувэн-ти,
手の小指を元に戻して見せた。それから奴隷は行った、森へ。
бэjуу-мэваа-ха-њилесэгди-вэ,гаи-ха-њи.мэггээ
獣を獲った、とってもたくさんを、持って来た。メルゲンは
мэггээочи-ги-ха-њи.экчи-вэхувэн-дуноодо-ги-ха-њи.
メルゲンに再び戻った。奴隷の覆いは森に捨てて来た。
мэггээасан-ти-вигунэ-и-њи,"гэ,ами-ми,эњи-ми
メルゲンは自分の妻に言う、「さあ、自分の父を、母を
гэннэ-гэ!"аса-њиэњи-ми,ами-мигэннэ-хэ-њи."эњэ,"
連れて来い。」妻は自分の母を、父を連れに行った。「母さん、」
гуӈ-ки-њи,"бииэди-виэкчибэjу-мэваа-ха-њи.
と言った、「私の夫である奴隷が獣を獲りました。
ǯэпу-нэ-э-су,"гуӈ-ки-њи.куукуэки-њигаамэдили-хэ-ти,
食べに来て下さい、」と言った。白鳥の姉たちは全員結婚していた、
баjагэтук-тиэди-ли-хэ-ти.ээки-њигунэ-и-њи,"чаагǯамӱ
富んだ人々へ嫁いだ。姉は言う、「ウサギ一匹ばかりの
уктэ-њиэ-ǯэӈэ-њииси-jа эгдињэ-дӱ."эњи-ми,ами-ми
肉では足りないだろう、こんなたくさんの人々に。」でも自分の母を、父を、
гаи-ха-њиǯӱӱк-ти.таадӱмапаача,мамаачаӈэнэ-хэ-ти
連れて行った、家へ。そこに父親と、母親とがやって来た、
пуǯииǯӱӱг-дӱла-њи.мэггээби-и-њи.экчимааки.пуǯии
ブジンの家に。メルゲンがいる、奴隷などいない。ブジンは
гунэ-и-њиамин-тиэњин-ти,"экчиваа-ха-њичаагǯампӱ-ва
言う、自分の父へ、母へ、「奴隷が獲ったウサギを
ǯэпу-нэ-э-су!"мапаача,мамаача,эки-њи,аӱси-њиэмэ-хэ-њи.
食べに来て下さい。」父親、母親、姉、姉の夫が来た。
бэjууктэ-њибӱа-лапоомби-и-њи.уктэ-вэлесикочи-ха-њи.
大型獣の肉が外にたっぷりとある。肉をたくさん煮た。
мапаача,мамаачаǯэп-пи-ти,эки-њи=дээǯэп-пи-њи,
父親と、母親は食べた、姉も食べた、
аӱси-њи=дээǯэп-пи-њи.мэггээгунэ-и-њи,"эпэӈэ,
姉の夫も食べた。メルゲンは言う、「お義父さん、
апаӈа,ǯуу ње=ккааǯэб-ǯээ-су!"
お義母さん、お二人で食べるのには十分足りるでしょう。」
мапаача,мамаачаǯэу-лээ-њиуктэ-вэбуу-хэ-њи.эсимэггээ
おじいさんと、おばあさんの食べ物として肉を与えた。メルゲンは
мээнэǯӱӱк-тигуулиӈ-ги-хэ-њи.таадӱӈэи-мэ,ӈэи-мэ
自分の家へ出発した。そこで行って、行って、
ǯӱӱг-дӱлаиси-ги-ха-њи.тоо=доомаjааки,саӈња=даамаjааки.
家に着いた。火もない、煙もない。
"ӈээтиркэбук-ки би-ǯээ,"мэичи-хэ-њи.мэггээуккэ-ли
「ングーティルクは死んでしまったようだ、」と考えた。メルゲンは戸から
ии-ги-хэ-њи.ӈээтиркэуккэ-дудакса-ха-њи.кӱап
入った。ングーティルクは戸にへばりついていた。ベリッと
тааӈ-ги-ха-њи."ӈээтиркэ,"гуӈ-ки-њи,"сиибогго-воњаӱке
引き剥した。「ングーティルク、」と言った、「おまえは油の肉を先に
jеки-њиǯэп-пи-си?"ааки-њиӈээтиркэ-вэǯэу-кЭӈ-ки-њи.
どうして食べたのか?」兄はングーティルクを食べさせた。
ӈээтиркэӱjа-ги-ха-њи.тууби-чи-ти,баагди-ха-ти.гоо
ングーティルクは命びろいをした。そうしていた、暮らしていた。長いこと
би-чи-ти.элээ.
暮らしていた。終わり。

(1)表記に関して、まず長母音は同じ母音の連続として表記した。原著におけるæはеとした。アクセント符号その他を省いた。н'はњとした。