風間伸次郎(採録・訳注).1996.『オロチ語基礎資料』(ツングース言語文化論集7,鳥取大学教育学部)より

7.キツネの男

мамачаа,мапачаа,багди-ха-ти.би-чи-њи,хатала.аjа~
おばあさんと、おじいさんが暮らしていた。いた、娘が。とても良い
хаталаби-чи-њи.тэихатала=даа,иппи-хэ-њи,игга-ха-њи.
であった。その娘は、縫った、模様を描いた。
мапачаа,гунэ-э,"ада~,"гуњэ-и-њи,"бии,ǯэву,"
おじいさんは言う、「妻よ、」と言う、「私は食べ物を、」
гунэ-и-њи,"ǯэвуичэ-нэ-ǯэ-и,"гунэ-и-њи,ада.ада
言う、「食べ物を探しに行く、」と言う、夫は。夫は
ичэ-нэ-хэ-њи, [a]хитэ-ти,иппи-хэ-њи,"эњэ~,"гуњэ-и-њи.
捜しにでかけた。子供は、縫っていた、「お母さん、」と言う、
"бии=дээмутэ-хэ-ми=э,"гунэ-и-њи."бӱасињуу-ǯэ-и=э,"
「私はもうできました、」と言う。「外へ出ます、」
гунэ-и-њи."баихуликтэ-ǯэ-и=дээ."бӱасињуу-хэнтэи
と言う。「ただ散歩するんです。」外へ出た、その
хатала,[и]сӱлакиǯава-ха-њи.мамачаанњуу-хэ-њи,
娘は、そこでキツネが連れ去った。おばあさんは外へ出た、
"хитэ~хитэхитэ~хитэ."мӱра-и-њимӱра-и-њимааки.
「娘よ、娘、娘よ、娘。」叫びに叫ぶがいない。
мӱра-и-њимӱра-ха-њи,мааки.эди-њиэмэ-ги-хэњи.гунэ-и, "о~
叫ぶに叫んだが、いない。夫は戻って来た。言う、
мамаача,ваа-ха-ми,"гунэ-и-њи."jаа-ваваа-ха-си."
「ばあさんや、獲ったぞ、」と言う。「何を獲ったのか。」
"бэjу-вэ~,"гунэ-и-њи."аӈи-латооила-ги-и,эси
「ヘラジカをだ、」と言う。「このために火をおこし、
ико-ǯэ-пи.хитэидуби-и-њи=э," гунэ-и-њи,мамачаагунэ-и-њи,
煮よう。子供はどこにいる?」おばあさんは言う、「今さっき
"эсиби-чи-њи,"гунэ-и-њи,"мааки,"гунэ-и-њи.хитэ-би
いましたのに、」と言う、「いません、」と言う。自分の子供を
мӱра-и-њимӱра-и-њиэ-чи-њ(и)=дээмааки.мапачаагунэ-и-њи.
呼びに呼ぶがどうにもいない。おじいさんは言う、
"гэлэ-ктэ-нэ-ǯэ-и,"гунэ-и,"аваси=дааӈэнэ-хэ-њ(и)=дээ
「探しに行こう、」と言う。「どこかにでも行ったのかも
бињǯээ."тувэби-чин.хоктоичэ-хэ-њи,сӱлаки
しれない。」であった。足跡を見た、キツネの
хокто-во-њи,[и]хитэ-ихокто-во-њи.ӈэнэ-хэ-њиӈэнэ-хэ-њи
足跡を、そして子供の足跡を。行った、行った、
баа-ха-њи,тэи-ду, аӈи-њисӱлакиǯӱба-дӱ-њитээси-и-њи=э,тадӱ,
見つけた、そこに、キツネの家に座っている、その時、
хитэ-њи."хитэ~,"гунэ-и-њи,"эмэ-кээуси.""ама~,"
彼の子供は。「我が子よ、」と言う、「来い、こっちへ。」「お父さん、」
гунэ-и,"минэвэ, аӈи,сӱлакиǯава-ха-њи=а,"гунэ-и.
と言う、「私を、キツネがさらったんです、」と言う。
"сӱлакиидуби-и-њи=а,"гунэ-и-њи."ǯэву-вэ
「キツネはどこにいる、」と言う。「食べ物を
гэлэ-ктэ-хэ-њи=э,"гунэ-и."туггэн=дээгэээмэ=кэ,"
探しに行きました、」と言う。「はやくさあ来い、」
гун(э-и)[а то]сӱлакињааэ-си-њи ањи-и[пока] сӱлаки
と言う、さもないとキツネが再び(来る)、まだキツネが
маака-дӱ-њи.ами-њ(и)ǯава-ги-ха-њи.ǯуба-тигаи-ха-њи.
いないうちだ。父は連れ帰った。家へ連れて行った。
хокто,хокто-иэсихуликтэ-и-њихуликтэ-и-њихуликтэ-и-њи,
足跡、足跡を歩き回る、歩き回る、歩き回る、
хокто-вобаа-ги-ха-њи.эгди~хоктоо-чи-њи.
足跡を見つけた。たくさんの足跡があった。
тэиэгдихокто-во-њи,тэихокто-ли, [и]тээси-и-њиаали,
そのたくさんの足跡を、その足跡に沿って、座っている、今、
хусэбӱасињууǯэ-и-њи.тээси-и-њи.хусэгунэ_и-њи."эси
男は外へ出た。座っている。男は言う。「今
сӱлакиэсисӱлакиэмэ-ǯэ-њи=э,"гунэ-и-њи."бии ањи,
キツネがキツネが来るぞ、」と言う。「私は
тээси-ǯэ-иǯӱбба-дӱ.эси аӈи-ва,элээлакиэмэ-и-њи,"
座って待とう、家で。もう近くに来ている、」
гунэ-и-њи,тээси-и-њи.ичэчи-и-њи.хуликтэ-и-њи,
と言う、座っている。見る。歩いて来る、
хуликтэ-и-њи,мапачаа=та"хэмэби-вэ-су,"гунэ-и-њи.
歩いて来る、おじいさんは、「静かにしていろ、」と言う。
"эмэ-и-њи=э,"гунэ-и.качааркачааримасааӈи-и-њи.
「来るぞ、」と言う。ザクザク雪を踏んで来る。
тэи-ду,мапачаа(-њи)тээ-хэ(-њи)тээси-и-њи.этучи-и-њи.
そこで、おじいさんは座っていた、座っている。見張っている。
укэ-вэ.э-чи-т(и) ката-jа,тути аӈи-ха-њи[верёвка]-ǯи
戸の所を。(戸は)縛っていなかった、ひもで
ањи-ха-њи,њаӈга~саӈа аӈи,нээк-ки-ти аӈи-ха-њ(и),
どうした、すこ~し穴を、あけておいた、
э-чи-њ(и) дакчи-jа-њи,[чтобы]сӱлакиичэ-лэ-њи.тэи,
閉まっていなかった、キツネを見るために。その、
аӈисаӈа-лиичэчи-и-њи.мапачаахэмэ~би-и-њи.тэи
穴を通して見ている。おじいさんは黙っている。その
сӱлаки-ва.укэ-ǯи аӈ-њи=э~ǯобо-и-њизобо-и-њи ǯобо-и-њи
キツネを。戸から(入ろうとして)苦労している、苦労している、
тэи аӈи-ва,укэ-вэ-њ(и).тоjоо=доомапаа-њимиачала-ха-њи.
その戸を。それからおじいさんは銃で撃った。
мапачаа-њињуу-хэ-њи,[а] тэиби-чи-њи хусэ! [ни]
おじいさんは外に出た。それはなんと男であった。
сӱлаки,хусэби-чи-њи.[оделся]сӱлакиаӈи-ва-њи, [как
キツネじゃなくだった。着ていた、キツネの何を(毛皮を)、
будто бы]сӱлакио-чи-њи. ањи-ли-ха-њи."jэу=дээсӱлаки
まるでキツネのようになっていた。「全くキツネなんかじゃ
э-си-њ(и) би-jэ~,"гунэ-и-њи,"хусэ,тэти-хэ-њи=э,"гунэ-и, сӱлаки
ない、」と言う、「男だ、服を着た、キツネの
аӈи-ва-њи,хаǯӱ-ва-њи.jэу=дээ,"гунэ-и,"сӱлаки
毛皮を、衣装を。何ということだ、」と言う、「キツネなんか
э-си-њ(и) би-jэ,"гунэ-и-њи.сӱлакихаǯӱ-ва-њитэти-хэ-њи
じゃない、」と言う。キツネの衣装を着ていた
би-и-њи.ичэ-ки-тихусэ-њи(и).хусэ,хусэ-вэ-њ(и)
のである。見れば、男である。人間の男、男を
миачала-ха-њи.тэиаса,омомапачаа,омомапач(аа),аjа~
撃ってしまった。その女を、あるおばあさんと、あるおじいさんに、良い
хаталаби-чи-њи.чоочи-хан,чоочи-чи-ха-њи.
娘がいた。(それを)盗んだ、盗んだのだ。