風間伸次郎(採録・訳注).1996.『オロチ語基礎資料』(ツングース言語文化論集7,鳥取大学教育学部)より

5.伝説3(オロチはなぜ読み書きを失ったか)

аjана-њиорочи-сабагди-ха-ти,хакасибӱа-дӱ.гэсэ
オロチたちは住んでいた、暖かい土地に。いっしょに
би-чи-ти,тоомисори-ли-ха-тиманǯӱ-са,гаӱли,моӈголи,
住んでいた、すると戦い始めた、中国人たち、朝鮮人たち、モンゴル人、
орочи-саӈээлэ-хэ-ти.сагдами-сагуӈ-ки-ти."ээду
オロチたちは恐れた。老人たちは言った。「ここには
э-ǯэ-п(и)би-jэ.хоӈтобӱа-тиӈэи-ǯу-пи.ӈэи-ǯэ-пи,
おるまい、我々は。別の土地へ去ろう。去ろう、
хоӈтобӱа-ти."тэу-хэ-тихаǯӱ-ми,инак(и)-са-ва,ǯэву-вэ,
別の土地へ。」積んだ、家財を、犬たちを、食べ物を、
тэу-хэ-ти,њаадаӈса-ва,хаӱса-ва [и]ӈэнэ-ли-хэ-тихоӈтобӱа-ти.
(船に)積んだ、さらに本を、紙を出発した、別の土地へ。
тадӱ,хээмэгдиорочи-саӈэнэ-хэ-ти.соли-ха-ти,гичиси
その時、とてもたくさんのオロチたちが行った。川を遡った、寒い
бӱа-тихокто-дӱтигдэлэси-хэ-њи.тигдэ-ли-хэ-њи.эди,
土地へ、道中雨がふった、雨が降りだした。風が、
эдилэ-нэ-хэ-њихакти~,хакти,би-чи-њи.тиманбагди-и-дӱ,
風が吹きだした、暗く、暗く、なった、次の日、暮らしている時に
намӱкиа-дӱ-њиогго-ло-итэу-хэ-тихаǯӱ-ва.хаǯӱ-ва,
海の岸辺で乾かそうとした、積んできた家財を。家財を、
даӈса-ва,хаӱса-ва,њаатигдэтигдэ-ли-хэ-њи.эди
本を、紙を、再び雨が降りだした。風が
эди-нэ-хэ-њи.хаǯӱ-вадаӈса-вахаӱса-ваогила-ха-ти
吹きだした。家財を本を紙をしまおうとした、
бэгди-ду.гаамњаака-ха-ти.эдизаӱса-ва,даӈса-ва
倉に。全て汚くなった。風が紙を、本を、
намӱ-тиэди-нэ-хэ-њи.тууорочи-са,буи-хэ-тидаӈса-ва,
海へ吹き飛ばして行った。こうしてオロチたちは失った、本を、
хаӱса-ва,хаǯӱ-ми,[и]эмэ-хэ-тихаǯин-ти,даатан-ти,
紙を、家財を、そうしてやって来た、ハジへ、ダータへ、
сӱркӱма,аӱкан-ти.тууорочи-сагаамбуи-хэ-ти.
シュルクムへ、アウカンへ(1)そうしてオロチたちは全てを失った。
э-си-т(и) саа-jа,э-си-т(и) таӈи-jаэ-си-т(и) њӱрӱ-jа.
知らない、読まない、書かない、
гаамбуи-хэ-ти.
全て失った。

(1)Аврорин и Лебедева(1978)によれば「(1)トゥムニン河に流れ込む小川、かつてそこにはПунэǯинка氏族が住んでいた。(2)タタール海峡に流れ込む小川とその海岸沿いの小湾、かつてはここにАуканка氏族が住んでいた。」とある。