風間伸次郎(採録・訳注).2000.『ナーナイの民話と伝説5』(ツングース言語文化論集14,東京外国語大学)より

6. ali ambaan

アリ アムバーン

1999年3月22日 ダエルガ村にて録音

N. B. Gejker氏口述


təi-ləundiisiə̂ŋəmmərɡənəmučəkəənbalǰixani.
一人のムルグンが一人っきりで暮らしていた。
təniibəjəɡujibaariimərɡən,naonǰoannai,əŋəmǰoodoolani.
やっと今体ができあがったようなムルグン、若い人だ、ある家の中に。
ə̂ŋtəi-ləundiisisiksətookoičimiitookoitamituixairiini-ɡoani,
彼は夕方に森へ上ったり、朝に上ったりしてそうしてどうするのだ、
bəjumbəbəičirəə,purəənpulsirəətaaundə.
獣を狩ったり、森を歩き回ったり、するという。
ə̂ŋtuitamiəmmodan-ɡolaundiisi,əŋsiksəapsiŋɡoxan-taniiundiisi,
そうしてある時、夕方横になった時に、
čipčipčipčipčiptuliədu,naisiasin,təi-təniipulsiinisiasin.
ヒタヒタヒタヒタと中庭で、人の音がする、そいつが歩き回っている音。
ə̂ŋčîlčilosioɡoxani.
その後音が止んで静か~になった。
ʼʼə̂ŋərdəŋɡəəsiəixaiǰaka.ʼʼtuitaraa-laundiisi,ətuuxəni.
「ウ~ム不思議だ、さあこいつは者だ。」そうしてから、見張っていた。
ə̂ŋundiisi,ətuuxəni-dəətəi-təniituitaidoani
見張っていたが、彼がそうしている時に、
ɡučičipčipčipčiptuiǰidiiwənilaŋatakǰapaxani.əmnaonǰokaanbičini.
またヒタヒタヒタヒタとそうして来るのをガバッと捕まえた。一人の少年だった。
ə̂ŋundiisitəi-təniiundiisi,xairiini-ɡoani,təi-təniiundiisi-ə,ǰapaxani.
彼はどうするのだ、彼は捕まえた。
təi-təniikolaanmodandolani-taniičilûčilubičintəipulsiinipokto.
その家の外の煙突の端の所にはた~くさんあった、そいつが通っていた足跡。
xaimiəčiəsaarani-ostuipulsiini.ə̂ŋtuitaraaundii,
どうして知らなかったものか、こうして通っているのを。そうしてから言う、
ʼʼsiixaosipulsiisi.ʼʼʼʼəŋaɡaâmimbiəəǰiwaara,ʼʼundii,
「おまえはどこへ通っているんだ。」「兄さん、私を殺さないで、」と言う、
ʼʼəŋmii-təniiundiisi,əimaŋbosoliâlanibiiəɡə,
「私はこの大河の上流にいるねえさん、
əɡəbaaroanikupindəsujə̂,ʼʼundiini.
そのねえさんの方へ遊びに通っているんだよ、」と言う。
ʼʼəŋxoonikupindəsuisidolbo.ʼʼə̂ŋundiisi,ʼʼkupii-ɡoani-â,ʼʼundii,
「どうして遊びに通うというのか、夜だぞ。」「でも遊ぶんだよう、」と言う、
ʼʼəɡəəǰi.ʼʼə̂ŋundiisi-ə,ʼʼsiiɡərbusiuiǰakani,ʼʼ
「ねえさんと。」「おまえの名前は何だ者だ、」
ə̂ŋundiisi,ʼʼaliambaantaambî,ʼʼundiini.
「アリアムバーンというんだよ~、」と言う。
ə̂ŋtaaŋəələčimiɡəsərəini-ɡoanitaapatarimi,dəŋdəŋǰaparaa...kaolixan-tanii.
ひどく恐れて白状するのだ、ひどく驚いて、ガッチリとつかまれて、やっと息をした。
ʼʼə̂ŋɡəə,kupindəsuiosinikupindəsuu,
「さあ、遊びに行くのなら、遊びに行け、
mii-dəəkupindəuribičin-ɡoanisaariiosini
私も遊びに行くべきだったのだ、知っていたならば、
baalasaaxanosini,sinǰiɡəsəɡəsə-dəə.ʼʼ
もっと前に知っていたなら、おまえと一緒に、一緒に、だ。」
ə̂ŋɡəətuitaraaundiisi-əənuxən,čindaɡoxani,mədəsirəə-dəə.
さあそうしてから去った、放してやった、いろいろ訊いてから、だ。
ə̂ŋtuitaraa-lamərɡən-ɡuləundiisiǰiačimania,xaixani,
そうしてからムルグンは次の日、どうした、
ʼʼtəisaktiinixaosipulsiini,ʼʼčimiitəəxən,ənəpsiŋkini,
「あのバカ者めはどこへ通っているんだろう、」と起きてから、出発した。
təipoktowani.ačamosimîənəəundə.
その足跡を(追って)。追跡して~行くという。
tuiənəmîənəmi-ə-ləundiisi,əmirɡəmbəbaaxani.
そうして行って~行って、ある村を見つけた。
ə̂ŋtəixaidolaundiisi-ə,xaibičini,əǰənxaandoanidaajoôǰoobičə,
そのどこに、何があった、主たる長の所に大き~な家があった、
naixairaundə,ə̂ŋnai,bəjəni...xaixani-ânaiiiɡuiniəɡuitaaundə.
人々は家に入ったり出たりしているという。
ə̂ŋundiisi,ʼʼəŋxaimaaripulsiisu,ʼʼundii,ʼʼiijə̂,ʼʼundii,
「どうして歩き回っているのか、」と言う、「はい、」と言う、
ʼʼəǰənpuǰin,ələəbudiijə,ʼʼundii,ʼʼəǰənmərɡənnəuni,puǰin.
「ご主人様のプジンが、今にも死にそうなのだ、」と言う、「主人のムルグンの妹の、プジン。
ə̂ŋnaiətuuməəri-dəəčiilaxači,ʼʼundii,
人が見張っていたのだがだめだったんだ、」と言う、
ʼʼxamačaaǰakapulsiini-usxaiǰakapulsiini-us,ʼʼundii,
「どんな者がやって来るんだか、何者が通って来ているんだか、」と言う、
ʼʼə̂ŋtəi-təniiundiisi-ə,səəksəwəniomiini-tanii,ʼʼundii,ʼʼxainaa-daa.ʼʼ
「そいつが血を飲んでいるんだ、」と言う、「たぶん。」
ə̂ŋundiisiəsi-təniiundiisi-ə,
tuitaraamərɡən-ɡuləčadoxairii-ɡoani,iixəntəiǰookči.
そうしてからムルグンはそこでどうするのだ、入ったその家へ。
nailatəǰə,təǰəbiini-ɡoani,ičəxəni,ə̂ŋxərə̂əmpuǰin-ɡuləundiisi,
人の所に確かに、本当なのだ、見た、あらら、一人のプジンが
kitânbočoxanbičin.
針のように細く痩せ細って、乾いてしまっているのだった。
xailoouləənpuǰin-ɡoani,ə̂ŋundiisi,xumduni,ənusiini.
何とも良いプジンなのだ、痩せ細っている、病んでいる。
ə̂ŋundiisi,ňaaǰaktani-daaǰooɡdobiinixaosi-daaəčiəənəni.
そのプジンの兄も家にいる、どこへも行かないで。
ə̂ŋɡusərəənduiɡusərəəndui,undiinixai,ʼʼandâ,ʼʼundii,
話す話す、言う、「友よ、」と言う、
ʼʼxamačaaǰaka,səəksəwəniomindasuiwani-daasaawasi,ʼʼundii.
「いかなる者が、血を吸いに来ているんだかわからない、」と言う。
ə̂ŋtəi-tənii,əŋdolbo-taniitəi,xairiidoani-tanii,
そいつが、夜に、
isindaɡoidoani-taniixəmoŋasaipo,ʼʼundiini,
着く時には皆が眠ってしまう、」と言う、
ʼʼxooňaaətuuxən-dəəuiətuuxən-dəəxəmoŋasii,ʼʼundiini.
「どんなに見張っていても誰が見張っていても眠り込んでしまう、」と言う。
ʼʼə̂ŋundiisiəsi-təniiundiisi-ə,xəmnaioŋasaočiani-tanii,
「今、全ての人が眠り込んでしまうと、
mənəsolaasəəksəwəniomiraatuiənui,ʼʼundiini,
好き勝手に血を飲んでそうして去る、」と言う、
ə̂ŋundiisiəsi-tənii,mərɡən-ɡuləsaaxani-ɡoani,aliambaanipulsiiwəni.
ムルグンはわかったのだ、アリアムバーンが通って来ていることを。
əŋtuitaraa-laundiisiə̂ŋtəiaoŋɡiiniosixani-ɡoanimalodôapsiŋkini,
そうしてからその寝る時となったのだ、真ん中の席に横になった、
mənəsəkčiuxənaoɡoani.
自分で敷いた、寝具を。
təipuǰintəi,pondaǰooniosinixaidobiini,
そのプジンはその、その家の娘ならどこにいるか、
ə̂ŋmalodaawoipaawadoani.
真ん中の席の渡った向こう側の窓の所に。
ə̂ŋdolbodolinələə̂isiidoanisiksəsiaraaxaitui,
夜も真夜中になろうという時に、夕食を食べてから、そうして、
ɡusərəənduməərituixairiija,tuitamaariəsixə̂mnaioŋasakaundə.
話をしてそうしてみ~んな人は眠ったという。
ə̂ŋdolbo,ətuuriiɡurunbiə,təəsiiɡuruntəəsii,
夜、見張っている人がいる、起きている人が起きている、
təi-təniitəiisindaidoani-taniimərɡənxəməə̂ičəǰəini-ɡoani,
彼はそいつがやって来た時にムルグンは黙って見ているのだ、
apsiŋkin-daaxaiaoɡilai,ə̂ŋnaixəmxaǰoŋkotəəsii,ətuuriiɡursəl.
横になったが、どうして眠るはずもあろう、人は武器を持って座っている、見張りの人々。
təi-təniičipčipčipčiptaidoani-la,xə̂moŋasakalundə.
彼らはヒタヒタヒタヒタと音がする時に、み~んな眠り込んでしまったという。
ə̂ŋnaixəmoŋasainiundiisi,uikəwənixəliɡurəəiikəundə,
人が眠り込んでしまうと、戸を開いて入って来たという。
ičəinitəialiambaakaaŋɡoniǰičin.
見るに、あのアリアムバーンめがやって来た。
ə̂ŋiiriiǰijiɡəsətəipuǰinči-məənəxəni.
入るやいなやそのプジンの所へと行った。
ə̂ŋxooni-kaatai-nooičəǰəini-ɡoani.
どのようにするものかと見ているのだ。
iiriiǰijiɡəsəundiisiə̂ŋsəəksəwəni-ləsimimidəruukəundə,
入るやいなや血を吸い始めたという、
ə̂si-təniimorapsiŋkinidaajiǰilɡanǰi,ʼʼaliambaani-aʼʼ-m-daa.
叫び出した、大きな声で、「アリアムバーンだぞ、」と。
ə̂ŋəsi-təniiundiisi-ə,təi-ləundiisixaosi-daaənuxəmbə-dəəxaira,
今、そいつはどこへ逃げ去ることも
osiasinitəialiambaannaimorapsiŋkini-tənii,
ならず、そのアリアムバーンは人が叫び出した時に、
naixəmtəəɡuxənixərəwə,taawoɡoxanəsi-təniiundiisitəi-təniiundiisi-ə,
人々は起きた、灯りを点けた、彼は
əŋxaixaiɡilai,waarii-ɡoanitəi,aliambaambani.
何をグズグズしているはずもあろう、殺すのだ、その、アリアムバーンを。
ə̂ŋtuitaraa-lačawa-taniiundiisi,xaiɡoi-ɡoani,təi,puǰimbə-təniiundiisi,
そうしてからそいつをどうするのだ、その、プジンを、
təixaiǰi,okčičiɡoini-ɡoanitəimərɡənčado-tol-daa.
そのそれで、薬で治すのだ、そのムルグンはそこで、だ。
ə̂ŋtəi,aliambaani,səəksəǰiəni-usniǰiraini-osxoonitaini-os.
その、アリアムバーンの、血でだか、塗って擦ったんだか、どうしたんだか。
okčiɡoxani.ɡoipuǰin...uləəndujiočoɡoxani-ɡoaničado-tol-daa.
薬で治した。元の元気な良いプジンに戻ったのだ、そこで、だ。
ə̂ŋtuitaraa-laundiisiə̂ŋxairii-ɡoaniɡəə,
そうしてからどうするのだ、さあ、
əsi-təniiňaaǰaktaaɡdaxân,ʼʼtoritamananaabuuwuri-a,ʼʼundii,
彼女の兄は喜んだ、「婚資のお金もなしでやるべきだ、」と言う、
ʼʼasiɡoasibuurəmbi,ʼʼundii,ʼʼnəuji.ə̂ŋbudiiwanixorixandoasi.ʼʼ
「おまえの妻にやる、」と言う、「私の妹を。死ぬのを助けてくれたんだから。」
ə̂ŋundiisi,əŋtuitaraatəi,asiɡojibaaraaǰiǰui-ɡoani.
そうしてからその、自分の妻を得てから戻って来るのだ。
ə̂ŋasiɡojimənəənaiirai.
自分の妻を勝手に人は運ぶ。
ə̂ŋtəi,taraaundiisi,ǰookčijiǰiǰuxən,tuibalǰii-goani,asigojibaaraaa-daa.
そうしてから自分の家へ戻った、そうして暮らしているのだ、妻を見つけて。
otkookaanəiləəbii.tuibalǰiiɡorobičəǰiǰabičəələə.
ほんのちょっとここまで、だ。そうして暮らしている長いこといた、短いこといた、終り。
xurmikuukəən,aliambaani.
短い話だ、アリアムバーンは。