風間伸次郎(採録・訳注).1998.『ナーナイの民話と伝説4』(ツングース言語文化論集12,千葉大学)より

5. аӈгаǯака амӥӈ-ко, чооӈбока=тањӥӥ эњиӈ-ку

アンガジャカは 父さんがいて、チョーンボカは 母さんがいる

1997年4月6日、ダエルガ村にて、Њ. Б. Гейкер氏より録音。


эмǯоодоо-ла-њӥ~балǯӥ-ха-чӥэмаӈгаǯака-ǯӥ~амӥ-њӥ,
ある家の中に暮らしていた、一人のアンガジャカ(1)とその養父、
чооӈбокаэњин-ǯи-эри~=дээ,туибалǯӥ-а-лундэ.туи
チョーンボカはその母親といっしょに、そう暮らしているという。そうして
балǯӥ-ӥ~туиби-ичооӈбока=тањӥӥ,эњи-њ(и)=тэњии
暮らしている、そうしている、チョーンボカを、母親は
чооӈбока-ӈго-jӥхаӥ-ва=дадаата-ваан-дадаасӥ,моо-ва=даа
自分のチョーンボカにはなんにもやらせはしない、薪だって
моола-нда-асӥ,муэ-вэ=дээмуэлэ-ндэ-эсисӥа-го-jӥ=даа
集めに行かせないし、水さえも汲みに行かせない、食べ物だって
пуjуу-вээн-дэси,аӈгаǯака=тањӥӥ,моо-вамоолсӥ-ӥ,муэ-вэ
煮させもしない、アンガジャカは、薪を取りに行ったり、水を
муэлси-исӥа-го-jӥпуjуучи-ита-аундэ.туиби-э(-л),
汲みに行ったり、食べ物を煮たりするという。そうしている、
аӈгаǯакаамӥ-њ(ӥ)балӥ,чооӈбокаэњи-њи,
アンガジャカの父親は盲目だ、チョーンボカの母親は
насал-ко-њӥ=гоањӥ,тэиаӈгаǯакасиӈгэрэ-кээчи-и-њи=го(ањӥ),
両目があるのだ、そのアンガジャカをいじめるのだ、
туибалǯӥ-а-лундэ.туибалǯӥ-ӥ~туиби-и,туи
そうして暮らしているという。そうして暮らしている、そうしている、そう
би-и-ду-э-њи=э=лэундиисиэммэргэнǯи-чи-њи.хаӥлооулээн
暮らしている時に一人のムルグンがやって来た。なんとも良い
мэргэнби-чи-њи.э~ӈаӈгаǯакаасӥ-го-jӥ
ムルグンだった。アンガジャカを自分の妻に
гэлэ-и-њи=гоањ(ӥ).гээ,чооӈбокаэњи-њихаӥлараа=го(ањӥ)
求めるのだ。さあ、チョーンボカの母親は驚いたのだが
чӥхала-ӥ-њӥ,"гээаjа,"ун-дии,"ǯапа-роо,"ун-дии,
承知する、「ああ良い、」と言う、「取れ、」と言う、
"асӥ-го-jӥ,хаӥ-ва=даагэлэ-эси~=дээамӥ-њ(ӥ)=даабалӥ=даа."
「妻として、何も見返りを求めないよ、父親も盲目だ。」
эси=тэњии,"гээ,аjа,"ун-дии,"гааǯ-оо,чооӈбока,
「ああ、いいよ、」と言う、「連れて行け、チョーンボカが
дэрэ...мэнэдэӈси-и-jэ,аӈгаǯакаамӥм-ба-њӥмэнэ
自分で働くようになるだろう、アンガジャカの父親のことも自分で
дэӈси-и,"ун-дии-њи.гэээси=тэњииаӈгаǯакаамӥм(-бӥ)
働くよ、」と言う。さあアンガジャカは自分の父親を
наӈгала-м(ӥ)соӈго-мӥ=оэнэ-и=го(ањӥ)тэимэргэн(-ǯ)и
残して泣きながら行くのだ、そのムルグンと
гэсэ=дээ.эситуи та-рааэнэ-рээ~туиби-эундэ
いっしょに、だ。それから行ってからそうしているという、
тэи=лэаӈгаǯакаǯобо-м(ӥ)би-чи-њихаӥмохо-гӥла-ӥ=а,тэи
そのアンガジャカはよく働いていた、どうしてできないことがあろう、
мэргэн-ǯиэǯилэ-рээ~би-и-њи=го(ањӥ),эммэргэнэмучэкээн
そのムルグンで夫として暮らしているのだ、一人のムルグンが一人きりで
ǯоог-доби-и-њи.туибалǯӥ-аундэтуиби-ми=этуи
家にいる。そうして暮らしているという、そうしていてそうして
би-мибэjэ-дуосӥ-ха-њӥ.э~ӈтуиби-и-ду(-э-њи)
いて体に身ごもった。そうしている時に
пикту-гу-jибаа-ха-њӥэмхусэ-кээм-бэ.эси=тэњиитуи
子供を産んだ、一人の男の子を。そうして
би-и-ду-э-њи=э=лэундиисиэ~ӈэммодан=голачооӈбокан-ǯӥ
いる時にあるチョーンボカと
эњи-мулиэии-кэ-лундэ.э~ӈнаӥǯи-чим-бэ-њи
その母親が二人で入って来たという。人がやって来たのを
jаохӥ-ӥ=гоањӥаӈгаǯака.сӥа-го-а(-чӥ)тэучи-хэ-њи=э~э~ӈ
暖かく迎えるのだ、アンガジャカは。食べ物を出した、
чооӈбокаэњин-ду-э-њидамхӥ(-в)атэучи-ита-ӥ-њ(ӥ)=даа,
チョーンボカの母親にはタバコをふるまったりするのだ、
"хооњ(ӥ) би-и-си=э~,"ун-дии,чооӈбокаэњи-њиун-дии-њи,
「どうしていたか、」と言う、チョーンボカの母親は言う、
"аӈгаǯака~,"ун-дии,"эǯи-jиǯиǯу-учиэ-њи=э,"ун-дии,
「アンガジャカ、」と言う、「夫が戻って来たらば、
хаӥ,ота-њӥачо-го-ӥ-до-а(-њӥ)хооњ(ӥ)та-а-чӥ=а,"ун-дии,
彼が長靴を脱いだ時には(おまえは)どうしているのか、」と言う、
"ота-њӥхооњ(ӥ)та-ӥ,холгӥ-ӥ=гоањ(ӥ).""хооњӥ
「彼の長靴をどうするかって?乾かすのよ。」「どうやっておまえは
холгӥ-ӥ-сӥ=а,"ун-дии."боа-чӥњиэ-рээ,сӥмата
乾かすのか、」と言う。「外へ出て、雪を
доо-чӥ-а-њ(ӥ)тӥастэучи-рээ,[печка]...хаӥголǯон
中へぎっしり詰めて、かまどの
уjэ-лэ(-њи)олпӥн-д(о)лоо-рам-бӥ,"ун-дии-њи.туи
上の所の 木製の鈎に掛けるわ、」と言う。そう
гусэрэ-и-њ(и)=гоањ(ӥ)."пиктэ-jисоӈго-ӥ-до-а-њӥхаӥ
語るのだ。「自分の子供が泣く時には何を
хооњ(ӥ)куу-рии-си=э,"ун-дии."ота-jӥачо-раа,эи,эи
どうやって乳を与えるのか、」と言う。「自分の靴を脱いで、ほれ、この
уӈчи-jикуу-рэм-би,"ун-дии-њи.эс(и)=тэњиитуи
踵を乳に与えるのよ、」と言う。そう
та-маарӥ=тањӥӥ,аӈгаǯака-а=тањӥӥчӥӥчӥ-маар(ӥ)=лахаончок
すると、アンガジャカを彼らはくすぐって意識が
энэ-хэ-њиваа-ха-чӥ,ǯуэ-ǯи-эри.э~ӈтуи та-раа=тањӥӥ
なくなった、殺した、二人で。それから
ундиисиэси=тэњииундииси=э,ваа-хан,ундииси,
殺した、
курээм-бэ=лэачо-раачуулгӥдала-ха-чӥ.эси=тэњииундииси
家の外の煙道の蓋を取ってまっすぐに突っ込んだ。
э~ӈтэипиктэ=тэњиитэисоӈго-ӥ=гоањ(ӥ),куум(-бэ)
その子供はそれは泣くのだ、乳を
куу-чи-и-њи,эǯи-њ(и)сиксэ~эу-гу-хэ-њи.аӈгаǯака
与える、夫は夕方山から下りて来た。アンガジャカの
тэтуэ-вэ-њ(и)тэту-гу-хэ-њичооӈбока=та(њӥӥ)насалтуи
服を着たチョーンボカは目をこうして
кааӥла-ха-њӥ=а,туи та-раа,эси=тэњииундииси=эмэргэн=гулэ
目隠しをした、それからムルグンは
ун-дии-њи,"эдэдэ~нэкусоӈго-ӥ=а,"ун-дии-њ(и)=гоа(њӥ).
言う、「おいおい、子供が泣いているぞ、」と言うのだ、
"корпӥ-асӥм-бӥ=а~,"ун-дии-њи."гээхооњ(ӥ)та-м(ӥ)
「時間がなかったのよ、」と言う。「おい、どうして
насал-бӥгучикааӥла-ха-сӥ,"ун-дии-њи."моо-вата-м(ӥ)
目をまたそんなふうに目隠ししたのか、」と言う。「薪を扱っていて
насал-чӥ-jӥтоӥко-вааӈ-кӥм-бӥ,"ун-дии-њи,"туи та-раа
目へ当たったのよ、」と言う、「それから
капса-хам-бӥ,"ун-дии-њи,"насал-бӥ."э~ӈэси=тэ(њии)
包帯したのよ、」と言う、「目を。」
мэргэн=тэњии,ота-jӥ=лахаӥ-ха-њӥ,ачо-ха-њӥ.ота-jӥ
ムルグンは靴を脱いだ。靴を
ачо-го-ӥ-ǯӥ-а-њӥгэсэ,ǯапа-мӥбоа-чӥњиэ-рээсӥмата-(в)а
彼が脱ぐとすぐにつかんで外へ出て雪を
тӥастэучи-рээголǯонуjэ-лэ-њи=лэолпӥн(-до)лоо-ха-њӥ.
ぎっしり詰めてかまどの上の鈎に掛けた。
тэи=тэ(њии)мэргэнун-дии-њи,"анда~пуǯинхооњ(ӥ)
そのムルグンは言う、「友たるプジンよ、いったい何を
та-ӥ-сӥ=а,"ун-дии,"эрдэӈгэ~хаӥ=даахооњӥмурунулээн
やってるんだ、」と言う、「不思議だなんとも、どういうつもりだ、良く
осӥо-го-ӥ-њӥ,эрдэӈгэтуи тул тул туилооча-асӥ-м(ӥ)=каа,"
乾くようにと、不思議だ、いつもは そんなふうに掛けないじゃないか、」
ун-дии,хаӥлараааjактала-ха-њӥ.мэргэн=тэњиињиэ...
と 言う、すごく怒った。ムルグンは
ǯапа-го-раахэмсӥмата-ва-њӥгуи-гу-рээлоо-го-ха-њӥ.мэнэ
つかんでから全部雪を振り落としてからまた掛けた。自分で
холгӥ-го-ха-њӥота.эси=тэњии"нэкусоӈго-ӥ=а,"
乾かした、靴を。「子供が泣いているぞ、」と
ун-дии=го(ањӥ),"куу-руу,"ун-дии-њи=го(ањӥ),"бала"=м,
言うのだ、「乳をやれ、」と言うのだ、「早く、」と。
эси=тэњииундиисиэ~ӈота-jӥ,ота-jӥ=лаачо-го-ӥ-ǯӥ-jӥ
自分の靴を脱ぐやいなや
гэсэнакан-д(о)тооко-каундэ."гээкуучи-уу,гээ
すぐオンドルに上ったという。「さあ乳を飲め、さあ
куучи-уу,"та-аундэ.тэи=тэњииэи,ачо-рааэиуӈчи-jи
乳を飲め、」と言うという。そいつはこの、脱いでからこの踵を
туикуучи-и-гу-э(-њи)буу-рии-њи,тэиоӈаака-до,уӈчи-jи.
こうしておっぱいとして与えた、その赤ん坊に、自分の踵を。
эси=тэњиимэргэн=тэњииэнэ-рээсӥантола-ха-њӥ.тэи=лэ
ムルグンは行って拳で殴った。そのムルグンは
ун-дии,"хооњ(ӥ)та-ӥ-сӥ=а,"ун-дии=го(ањӥ)хаӥ,"хооњ(ӥ)
言う、「何してるんだ、」と言うのだ、「何を
эрдэлэ-и-си"=эм,"сиитуи=дээ.""мииэлэ-ǯи-э-њи=этуи
変なことしてるんだ、おまえはこんな風に。」「私は十分なだけこうして
куу-рэси-м(и)...туикуу-њ(и)... куу-њ(и) куу-рэси-м(и)=кээ,"
乳を与えて、こうして乳を(いつも通りに)与えているじゃありませんか、」
ун-дии-њи.э~ӈундиисиэси=тэњиимэргэн=тэњиипиктэ-jи
と 言う。ムルグンは自分の子供を
ǯапа-го-раа,эмуси-и=гоањ(ӥ).туиэмуси-и-њи=э~оӈаса-ха-њӥ.
つかみ取って、あやすのだ。そうしてあやしていると、眠り込んだ。
эси=тэњиичооӈбока=тањӥӥ,хаӥ-чӥ=ла,кэркичэ-дутооко-раа
チョーンボカはどこへ、かまどの横の場所に上って
та-докумэли-гу-рээоӈаса-каундэкоотоохончӥра-м(ӥ).
そこで頭からすっぽり被って眠り込んだという、グースカいびきをかいて。
э~ӈмэргэн=тэњиимурчи-и-њи,"эихооњ(ӥ)та-ӥ-њӥэрдэӈгэ,
ムルグンは考える、「こいつはどうしたんだ、不思議だ、
хаӥ-м(ӥ)туиосӥ-ха-њӥаӈгаǯака=кааэчиэ туиби-рэ."
どうしてあんなになっちまったんだ、アンガジャカはあんなじゃなかった」
хаал хаалосӥ-ха-њӥмэргэн.э~ӈтуипиктэ-jи,мало-д(о)
訳がわからなくなった、ムルグンは。そうして子供を真ん中の席で
туиэмуси-и=гоањӥ,туимало-дотуиэмуси-и-ду-э-њи=э~
そうやってあやしているのだ、そう真ん中の席でそうあやしている時に
хаӥ=асӥан-дола=ноо,хаӥ=асӥан-дола-њӥ,тэӈнаӥ
何か耳にか、何かが耳に、たしかに人が
миӈгучи-и=мээ~та-аундэ.туи та-мӥии~хэихэта-а
うめいているような声がするという。そうしてウウッ、ハァと声がする
ундэтуи=тэ(њии)улээ~ндосоǯӥ-ӥ-њӥ.хооњ(ӥ)=даа
という、それで良~く耳をすませて聞いてみた。どう
досоǯӥ-ӥкурээн-дуби-и.курээн-дуби-эундэнаӥ
聞いてみても外の煙道にいる。外の煙道でするという、人の
ǯӥлга-њӥ.энэ-рээкурээм(-би)ачо-ха-њӥ.мама-њ(ӥ)чадо
声が。行ってから煙道の蓋を取った。妻がそこに
би-и-њ(и)=го(ањӥ)тэи,аӈгаǯака.гээ,агбӥмбо-го-ха~н
いるのだ、その、アンガジャカ。さあ、引き出した、
гээ~эси=тэњииагда-хан=тањӥӥпиктэ-њи...пиктэ-jи
さあ喜んだ、自分の子供を
ǯапа-го-ханпиктэ-jитаасоӈго-м(ӥ)куу-рии=го(ањӥ),
手に抱えた、子供はワンワン泣いて乳を与えるのだ、
пиктэ-jи=лэундиисиэси=тэњии,мэргэн=тэњиичооӈбока-ла
自分の子供に。ムルグンはチョーンボカを
ǯапа-ӥ-ǯӥ-jӥ гэсэваа-ха-њӥ.э~ӈтуи та-раа=тањӥӥ,
ひっつかむやいなや殺した。それから、
хаӥ-ха-њӥ.ваа-ха-њӥундиисиэси=тэњиимэргэн=тэњии
どうした。殺した、ムルグンは
ундииси=э,ваа-ханбоа-ла=лахооњ(ӥ)та-ха(н)=осхооњ(ӥ)
殺した所でどうしたのか、どう
та-ха(н)=остэи,пуǯин=тэњииундииси"э~ӈмэргэн,"ун-дии,
したのか、プジンは「ああ、ムルグン、」と 言う、
"анда~мэргэн,"пуǯинун-дии,"мии=тэ(њии)эрдэӈгэси-и~=э,"
「友たるプジンよ、」とムルグンは言う(2)、「オレは驚いたぞ、」と
ун-дии,"тэи=тэњиинэку=тэњииундииси,унчи(-jи)куу-рии,
言う、 「そいつは子供に踵を乳に与えて、
маакуучи-уу,маакуучи-ууэрдэлэ-и-њи,"ун-дии,"нэку
ほらお飲み、ほらお飲み、と変なことをしやがった、」と言う、「子供は
соӈго-ӥ=даасоӈго-ӥ,туи та-мӥичэ-гу-хэм-би,"ун-дии,
泣きに泣いた、そうして私が見ると、」と言う、
"чаракола-рааунчи-jи,эиунчи-jикуу-рии...
「履き物を脱いで自分の踵を、この踵を乳に、
куунчи-вээӈ-ки-њи,"ун-дии-њ(и)=гоањ(ӥ)."туи та-раа
飲ませていたではないか、」と言うのだ。「それから
сӥантола-хам-бӥ,"ун-дии-њ(и)=гоањ(ӥ),"хаӥ, хаалӥсии
ブン殴ったんだ、」と言うのだ、「いったいいつおまえが
туи кууву-хэ-си=э"=мдэ."туи кууву-рэси-м(и)=кээ мии бааро-jӥ-а
そんな風に 乳を与えたことがあったろうか。いつもこうやって 与えていたわと
ǯулэаjактала-ӥ-њӥ,"ун-дии-њи=гоањ(ӥ),"сактӥӥ-њӥ=каа,"
先に怒りやがったんだ、」と言うのだ、「あのバカ野郎めが、」
ун-дии-њи.э~ӈтуи та-раа=лаундиисиэсипуǯин=тэњии
と 言う。それからプジンは
эjээтаjаакуум(-би)элэдэлэ~пиктэ-jикууву-хэ~нэси=тэњии
こっちとあっちのおっぱいを十分なまで自分の子に与えた、
ундииси=э,тэичооӈбока=тањӥӥ,саа~рчаасо-ха-чӥ.туи
そのチョーンボカをズタズタにひき肉に切った。
та-раа=тањӥӥпуǯин=тэњииундииси=э~лампака-дотэучи-хэ-њи,
それからプジンは袋に詰めた、
лампакапэрэг-ду-э-њ(и)=тэњии,ǯӥлӥ-ва-њӥнээ-хэ-њичооӈбок(а)
袋の底には、頭を入れておいた、チョーンボカの
ǯӥлӥ(-в)а-њӥ.эӈтэиуликсэ-вэ-њ(и)=тэњиихэ~млампака
頭を。その肉を全部袋の
доо-чӥ-а-њӥтӥастэучи-гу-хэ-њи.э~ӈундиисихаӥ,эм
中へぎっしり詰めた。一つの
пакаа~пакааманахапасӥ-ǯӥ-а-њ(ӥ)=тањӥӥ,уликсэулээм-бэ-њи
黒い黒い魚皮の切れ端で、普通の肉の良い物を
доо-ва-њӥхуку-хэ-њи.э~ӈтуи та-раанээ-хэ-њи.тэи
中にくるんだ。それから置いた。あの
чооӈбокатэучи-хэм(-би)=тэњиипааǯӥ-кааннээ-хэ-њи=гоањ(ӥ)уикэ
チョーンボカの肉を詰めた袋と別々に置いたのだ、戸の
даа-до-а-њӥ=даа.э~ӈундии(сӥ),ǯӥачӥмањӥ-а=лаундиисиэ~ӈ
そばの所に、だ。次の
паава-ла~ǯи-чи-њи."эӈчооӈбока~би-и-си=нуу,"ун-дии.
窓の所にやって来た。「ねえ、チョーンボカ、いるのかい、」と言う。
"би-и=гоањ(ӥ).эњиэ эǯи ии-рэ,"ун-дии-њи."уикэ-лэ
「いるわ、母さん、入らないで、」と言う。「戸から
ӈаала-jӥалоо-роо,"ун-дии-њи,аӈгаǯака."хаӥ,наӥ
自分の手を差し出せ、」と言う、アンガジャカは。「人が
би-и=jэ,"ун-дии-њи,"хаӥ,эилампака=тањӥӥсинду,"
いるから、」と言う、「この袋はあなたに、」と
ун-дии,"эиманахахукучэн=тэњииаӈгаǯакаамӥн-до-а-њӥ
言う、「この魚皮の切れ端でくるんだのはアンガジャカの父親に
буу-хээри,"ун-дии-њи.э~ӈтуи та-раа=лаундииси=э,
やって下さい、」と言う。それから
тэи=лэмама=лапӥнала-го-раа~эну-и=гоањӥтэи,гаакӥ
そのばあさんは背負って去るのだ、ばあさんはカラスが
дэгдээчи-и-вэ-њиичэ-и=э~,"гаакӥээjээкээ~,"та-м(ӥ),
飛んでいるのを見て、「カラスよ、ほうらいいだろう、」と言う。
"гаак,гаак,чооӈбока та-ха-с(ӥ)наса-њӥчокчо-хаарӥ,гаак
「ガー、ガー、 チョーンボカの目玉をつっ突いてやれ、ガー、
гаак.""эњи-с(и) каато-њӥ,чооӈбок(а)наса-њӥхаӥчокчо-хаарӥ
ガー。」「こん畜生め(3)、チョーンボカの目をなんでつっ突け、
би-рэ,"уӈ-ки-њи."э~ӈ ээjээкээ~ гаакӥ ээjээкээ,"та-аундэ.
なんだ、」と言った。「ほうれカラスよ、肉だぞ羨ましいか、」と言うという。
э~ӈтуиэнэ-эундэ,туи,туиэнэ-эсаксӥӥ=даатуи
そうして行くという、そうしてそうして行く、カササギもそうして
ичэ-рээун-дии-њи=ус,"э~саксӥӥээjээкээ~,""саксаксаак,саксаксаак,
見てから言う、「おおい、カササギ、ほらいいだろう。」「サクサク、サク、
чооӈбок(а)наса-њӥ,чооӈбоканаса-њӥсоксо-хаарӥ=а
チョーンボカの目を、チョーンボカの目をつっ突け、
саксаксааксаксак.[и]чооӈбоканасал-њӥсакса."э~ӈтуи
サクサクサーク、サクサク、チョーンボカの目を、サクサク。」そうして
хаӥ-расоӥ-м(ӥ)эну-и=го(ањӥ).эӈтуи та-рааундииси
叱って去るのだ。それから
ӥсӥ-го-ха-њӥундииси,пакчӥрааӈго-ӥ=гоањ(ӥ)ǯоо-jӥ
到着した、暗くなっているのだ、家に
ӥсӥ-го-ӥ-до-а-њӥ.э~ӈэс(и)=тэњииундииси=э,аӈгаǯака
着く時には。アンガジャカの
амӥ-њӥбааро-а-њӥ=латэимана(ха)хукучэ-вэ-њи=лэ
父親の方へその魚皮の切れ端で包んだ物を
наӈгала-го-хантули...туӈгэн-дулэ-њитуу-гу-и-ǯи-э-њи."аӈгаǯака
投げてやった、胸の所に落ちるように。
хаӥ-сӥ,аӈгаǯакауӈкурэ-хэ-њи,"уӈ-ки-њи.э~ӈ
「アンガジャカが小包を送ってくれたよ、」と言った。
мапаачан=гола~тэиманаха-ӈго-њӥхукучэ-вэ-њи=лэундииси=э,
おじいさんはその魚皮の切れ端の包みを
эӈачо-раасӥа-рӥӥ=гоањӥ,сӥнорсӥӥ=дааби-иамтасӥӥ=даа
取って食べるのだ、脂っこいのもある甘いのも
би-игочӥсӥӥ=дааби-иундэтэи,сома...хаӥ-доманаха
ある苦いのもあるというその魚皮の切れ端の
хукучэндоо-ла-њӥ=ла.њоањ(ӥ)=тањӥӥ,тэибалӥǯӥа-ко-ла-jӥ
包みの中には。一方おばあさんの方は、その盲人を仲間として
наӥ,тава-а=дааӥван-дадаасӥ,ихэрэ=дээтааво-адаасӥ,
(暮らしてるので)火も焚きやしないし、明かりも灯しやしないし、
ǯукээ~нголǯон-до-jӥтава-каам(-ба)нээ-рээчадо=ласӥа-ра
かろうじてかまどに小さな火を置いてそこで食べる
ундэтэи=лэ,уликсэ-ӈгу-jи=лэ.туисӥа-рӥӥ~аӈгаǯака
というそいつは、自分の肉を。そうして食べる、アンガジャカの
амӥн-до-а-њ(ӥ)=даабуу-рэдээсимэнээ мэнээтуи
父親にもあげやしないのだ、自分一人だけでそうして
сӥа-рӥӥ-њ(ӥ)=го(ањӥ)тэи=jэс,лампака-jӥдоо-ла-њ(ӥ)би-и
食べるのだ、そいつは、袋の中にある
уликсэ-э=лэ,э~ӈтуи,туисӥа-рӥӥтуиби-итуиби-и
肉を、そうしてそうして食べる、そうしている、そうして
туи та-мӥ=а=лаундииси,эӈмана-ха-њӥ,тээм,эм
そうして尽きた、ただ一つ、
ǯӥлӥ-њӥосӥо-го-ха~н.эси=тэњиичаалаэу(си)тааjоосс,
頭だけになった。そこでこっちへ転がしてみたり、
тааӥтааjоосс,тэи=лэхаӥ-раундэ,эмуи-jэундэ
あっちへ転がしてみたり、そいつはそうするという、転がすという
тэи=лэǯӥлӥ-а=ла.э~ӈтуи та-мӥ=а=лаундииси=э,тава-jӥ=ла
その頭を。そう して火を
пуу~ пуу та-м(ӥ),хаӥ-ха-њӥ,тава-jӥ,њаӈгаатаа...
フーフーと 息を吹きかけて、どうなった、火は少し
ӈээмосӥ-ха-њӥ.чадо=маичэ-гу-хэ-њи,чооӈбока-ӈго-њӥ
明るくなった。その時になってやっと初めて見た、チョーンボカの
ǯӥлӥ-њӥби-чи-њича(в)асӥа-ха-њӥ.туи та-раа=ла
だった、そいつを食べてしまった。それから
ун-дии-њ(и)=гоањ(ӥ),"энэjээ~ундиисипиктэ-jи
言うのだ、「あらら、自分の子供を
сӥа-хам-бӥ та-ӥ=кочӥ~ундииси=эхаӥ,гоӥда-м(ӥ) би-пу-гу-jи
食べてしまっただなんて、長生きしたりしたら ずうっと
мээп(и)каӥран-ǯаам-бӥ"=м,боа-чӥњиэ-рээундииси=э,такто-jӥ
自分の行為を後悔するだろう、」と外へ出て倉の
уjэ-ду-э-њимээп(и)пасӥ-раахоǯӥ-ха-њӥ.э~ӈаӈгаǯака
上に自分を吊って 命を終えたのだ。アンガジャカの
амӥ-њӥэмучэкээносӥо-го-ӥ=го(ањӥ)ǯоог-д(о)пак...балӥ
父親は一人きりになったのだ、家に盲目の
наӥ.э~ӈтуи та-раа=лаэси=тэњии,туи та-раа,тэи=лэ
人が。それから今、それから、その
аӈгаǯака-ла=дааэм хадолта=о~би-пи=э=дэээǯи-њи
アンガジャカの所から数日経ってから夫が
ичэ-ндэ-хэ-њи.мапаачаанэмучэкээнби-и=гоањӥ,сӥа-го-jӥ=даа
見に行った。おじいさんが一人きりでいるのだ、食べる物も
баа-расӥтаваӥваӈ-го-jӥ=даабаа-расӥ,э~ӈтэичооӈбока
見つからない、火をおこす物も見つからない、そのチョーンボカの
эњи-њ(и)ба~ланмээп(э)пасӥ-ха~н.э~ӈтуи та-раа=ла
母親はずっと前に自らを吊ってしまっていた。それから
тэи=лэмэргэн=гулэундииси,эӈтэи=лэмапа-а=лаундииси
そのムルグンはそのおじいさんを
э~ӈǯапа-го-ха~н,мээн-чи-jигааǯо-ӥ=гоањ(ӥ),тэи
取った、自分の所へ連れて来るのだ、その
ǯоо-ва-њ(ӥ)=тањӥӥтуиби-и-лэ-њи,хаӥ-ва,голǯон-дола
家を、そのようにそこにあるのを、かまどから
моо-ва,хаӥ-ва...тава-аǯапа-раа,эрчэн-дулэ-њ(и)
木を、火をつかんで、庇の所に
гӥдала-ӥ-њ(ӥ)=го(ањӥ)хэмчооӈк чааӈкǯэгдэ-и-ǯи(-э-њи).туи
突き刺すのだ、全部ゴウゴウと燃えてしまうように。
та-раамээн-чи-jигааǯо-раа~би-и=го(ањӥ),мапаачан=тањӥӥэси
それから自分の所へ連れてきてから暮らすのだ、おじいさんは
тэипиктэ-кээн-ǯикупи-и,аӈгаǯака-ӈго(-jӥ)пиктэ-ǯи-э-њи.
その子供(孫)と遊ぶ、アンガジャカの子供と。
дуисикэчэри-гу-хэн=дээ сиупу~,ваӥсӥкэчэригу-хэн=дээ
山の方へ振り向くと クマ肉の串焼きがある、川の方へ振り返っても
сиупу~мапаачанǯээ ǯирга-м(ӥ), улээ-њи балǯӥ-ӥ=ноо
串焼きがある、おじいさんは御馳走を食べて、良く暮らすことは並みじゃない、
горо~би-чэ,ǯӥǯаби-чээлээ.
長いこと暮らしたことか、短いこと暮らしたことか、終わり。"

(1)аӈгаǯаは「孤児」の意味で、語り手もангаǯакаはこの意味がある、という。一方чооӈбокаには意味がなく、単なる名前だという。

(2)原語どおり訳すならば、「ムルグンがプジンに言った、」ではなくて「プジンがムルグンに言った、」のであるが、セリフの内容からみて、語り手が言い間違えたものと考えられる。

(3)文字どおり訳すならば「おまえの母親の女性器」となる。