風間伸次郎(採録・訳注).1995.『ナーナイの民話と伝説』(ツングース言語文化論集5、小樽商科大学言語センター)より.

7. ӥлаан сиун

三つの 太陽

1994年3月14日、ダエルガ(даерга、ハバロフスク州ナーナイ自治区ナイヒン村に隣接する小村である)にて、Њэсултэ Борисовна Гейкер(ゲイケル)氏(女性、1920年 Таргон村 生まれ)より録音。


ӥлаансиунмаӈгагарпа-ха-нӥ=а,ун-дии,тэй=тэнии,
三つの太陽が強く輝いていた、と言う、それ(暑いこと)は、
согдатауйс(и)...пуйку-й,ǯоа,ойлакоактӥгакӥата-го-й,
魚が上へ跳ねれば、夏に、上でひっくり返って死ぬ、
туй,туй та-м(ӥ)=танӥӥтэй,эмнай=та(нӥӥ)энэ-хэ-ни
そんなだ、そうしてあの、一人の人が行った、
ун-дии,ǯаксор.туйта-рааэнэ-рээ=тэнии,ǯуэ(р)
と言う、ザクソル氏。それから行ってから、二つの
сиум(-бэ)ваа-ха-нӥун-диигарпа-ха-нӥ,эмуносӥ-го-хан,
太陽を殺した、と言う、輝いていたのを、一つになった。
тайа-ǯӥ-а-ǯӥǯиǯу-м(и)=тэнии,сэвээ-ӈгу-йихай-ва=даахэм
そこから戻って来て、自分の神像を 何でも全て
хэтэ-хэн,гааǯо-м(ӥ)туӈгэн-ду-йинээ-хэ-ни=го(анӥ),
しまった、持って来て自分の胸に置いたのだ、
тэучи-хэ-ни.тэй=тэниисогдата-ва=танӥӥǯапа-хан,ой-ла
大事にしまったのだ。彼が魚をつかんだ、上に
би-й-вэ-ни.эй-лэ-никэркилэ-хэн.ǯоло-каам-банээ-рээ
いるのを、そこでハンマーでうった。石を置いて
муэ-чинээку-хэн=тэниимэнэхэмхораго-й,туй (1)
水へ戻した、(そうすると)自ら全て生き返った。そんな風になって
ǯиǯу-хэ-ниун-дии,туйта-раа=танӥӥтэй=тэнииǯиǯу-пи=тэнии
戻って来た、と言う、それから彼は戻って来ると、
хай-ха-нӥ=гоан(ӥ),ǯооӥсӥ-го-хан,тэй=тэнии
どうした、家に着いた、彼は
сии-хэ-ни=гоан(ӥ),голǯом-бӥ,паава-йӥхэмсии-гу-хэ-ни.
閉ざしたのだ、かまどを、窓を、全て閉ざした。
тэй=тэниисэвээм-би=тэниибэсэрэ-ду-йинээ-хэ-ниэй
彼は神像を長椅子に置いた、それ(神像)を
туӈгэн-дулэ-йиагӥмбо-го-й.туйнээ-ктэ-пи=эичэ-гу-хэ-ни.
胸の所から出した。そうして並べると見た
хэмабана-хан.туй та-раапаава...чооӈко-чӥичэгу-хэ-ни
全て消えてなくなった。それから天窓の方を見た、
баланаа=каатуй би-йчооӈкоби-чин=го(анӥ)чадо,наа най
昔(の家)はこのようであった、天窓があったのだその頃、ナーナイ人の
ǯоог-до-а-нӥ.чооӈко-ла-н(ӥ)=танӥӥнэптэлэ~лчачӥдэгдэ-хэ-ни.
家には。天窓からスゥーッとそこへ飛んで行った。
гээ,тэйчооӈкобоӈго-досии-хэносӥнӥгойбоа-до
さあ、その天窓を最初に閉めていたならば他の場所には
уй-ду=дээсамааабаа би-мчэ,тэмǯаксор-до=рагдаа
誰にもシャーマンはいなかったはずなのだ、ただザクソル氏にのみ
би-гилэ-хэн би-чи-ни.тэй=тэниитэйсэвээн=тэнии
いるべきであったのだ。それはその神像は
дэгдэ-хэн=тэниитуугу-хэ-нибоа-до=танӥӥтэйОнӥнка-салсаман
飛んで行った、降りたった場所では、あのオネンコ氏もシャーマン
осӥ-ханКиле-сэлсаманосӥ-хангойхаласаман
となり、キレ氏もシャーマンとなった、他の氏族もシャーマンと
осӥ(-ха-нӥ).туйта-ха-нӥун-дии-ни,тэй,гаакӥ=танӥӥ
なる。そうなったと言う、あの、カラスは
тэймаӈгасиунгарпа-й-до-а-нӥ,илэлэби-чи-ни=эун-дии,
そのひどく太陽が輝いている時に、上にいた、と言う、
туй та-м(ӥ)пакаапакааосӥ-ха-нӥгаакӥ.тэй
そうすると黒く黒くなった、カラスは。あの、
саксӥӥ=танӥӥǯолоалдан-до-а(-нӥ)сӥрӥча-ха-нӥун-дии,тэй
カササギは石の間に隠れていたと言う、その
агбӥча-хам-ба-нӥхэмсахарӥ~н,тэйǯоло-каан-дола,чӥа-ла-нӥ
外に現れていた部分は全て黒く、その石の後ろに
би-чин=тэ(нии)чаагǯаносӥо-го-ха-нӥун-диитэй,тэй
あった部分は白くなったと言う、それは、あの
саксӥӥӥлга-ко-ǯӥ.элээ-ни=гоан(ӥ),тэй.
カササギは模様つきに(なった)。そこまでなのだ、その伝説は。

(1) 最高に強い、素晴らしいシャーマンになって戻ってきた、という意であるという(協力者による)。